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17章 クロネコの予言




あれからは何事もなく日は過ぎて行ってもう二月。早かったなぁ一月は。
「ぐはーっ」
冬休みが終っても、まだ外出禁止令が残ってる。遊びにいきたいよー。
結局一番おしおきが悪かったのは私だったし。鈴実はバレなかったらしい。良いなぁ。
『キ―ンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン』
「なんでこう、ちょうどチャイムが鳴るの」
しかも実力テスト、点が悪かった。課題テストは良かったんだけどなあ。
三学期の期末テストは七十点以上取らないとお小遣いが減るんだよね。新作のソフトが欲しいのにそれは困る。
「どうした? ああ、まだ外出禁止令が残ってんだっけか」
「いいよねえ、靖は。外出禁止は冬休みの間だけだったもん」
「そうふててもしょうがないでしょ。ねえ、今度は何の理由で外出禁止令になったの?」
「あ、そーいえば美紀とレリには言ってなかったっけ」
靖の顔をみる。靖とは顔を見合わせるだけでほとんどの意思が伝わるから言うより早い。
でも、他の皆にはそれじゃ伝わらないんだよね。鈴実とだって複雑な伝達は出来ないもん。
「親父と母さんには言わなかったけどな。光奈に頼まれてたことだ」
「あら。あたしとレリのいない間に見つけたの?」
「おう。いろいろあって清海が竜と契約する事になったわけだ。んで、帰ってくんのが遅くなった」
「契約、ねぇ……竜が現れたっていうのもだけど。しっくり来ないわ。まあ、とにかく契約が原因なのね?」
「うん、そうなるのかな。美紀、冬休みの間ずっと長野に帰ってたの?」
美紀の本家は長野にある。お正月は毎年帰ってるんだよねえ。今年も例年通り行ってた。
「ええ。出かけたのは……ちょうど清海達が門を壊しに行った日の早朝ね」
「早朝って何時から?」
「三時。寝てたのにお兄ちゃんに起こされたわ。あの人も不機嫌だったけど。ま、年明けくらいは祖父母に顔みせなきゃね」
「おじいちゃんとおばあちゃんかぁ」
私のとこも遠いんだよね。
お母さんのほうは香川県だし、お父さんのほうは秋田県だもん。
それにお母さんのほうは冬と夏、お父さんのほうは春と秋にそれぞれこっちに来るし。
ああ、ちょうど今月の中頃くらいにおじいちゃんとおばあちゃんが香川来るかも。



昼休みからあっという間に授業が終って、もう終礼になった。
相変わらず私と鈴実は部活に所属してないから、終礼イコール帰宅時間になる。
だから今日も一緒に帰るんだけど、今日は掃除当番だから帰るのがちょっと待たせちゃうかな。
スーパーのタイムサービスによっては鈴実が一人で先に帰っちゃうかも。
お一人様につき何個、とかいう制限が設けられてたら付き合わされることになるけど。
今日の曜日だと、何処のスーパーがタイムサービスしてるんだっけ?
そう思っていたら、鈴実が教室に来た。
「ねえ、校門にご老人が二人いるみたいよ。清海のおじいさんとおばあさんじゃない?」
あたしは見てないからわかんないけどね、と鈴実は付け加えた。
「えっ」
窓から校門の方をみる。うちのクラスからなら見えるはず。
「あ、ほんとだ」
おじいちゃんとおばあちゃんがいる。うーん、噂をすれば影かな?
「今年は校門で待ってるわね。去年は帰り道だったけど。いつも突然だからビックリよね」
「あはは……そうなんだよねー」
苦笑いするしかなかった。私もいっつも驚かされるんだもん。でも鈴実、寂しくないかな?
鈴実のおじいちゃんとおばあちゃんはいっつも旅行に行ってるらしいけど。
「ああ、それと。今日はすぐスーパーにいかなきゃならないの。悪いけど先に帰らせてもらうわね」
「……うん。バイバイ」
タイムサービスは待ってくれないもの、というのが鈴実の返事だった。うーん、切羽詰まってるなあ。










「ふぅ……なんとかニシンとブリは確保出来たわ」
タイムサービスの激戦をまず乗り切ってから、あたしは一息ついた。
さて、今日の晩ご飯の材料も買い揃えないとね。魚は明日以降に回すとして。卵と醤油が切れてるし。
あの姉はあたしが不在だった間、たまごかけご飯だけで食いつないでいたせいだわ。
家に帰って真っ先に冷蔵庫を開いたら、醤油がほとんどカラになっていた。出かける前には並々とあったのに。
その後、まさかと思ってゴミ箱の蓋を開けてみればカップ麺の容器で満杯になっていた。
さしものあたしも、あれを見たときはくらっと来たわ。そんじょそこらの悪霊よりタチが悪い。
「まったくもう。高校生にもなって自炊ができないなんて」
絶対お姉ちゃんは自立しようとしないタイプよね。
もうちょっとましなのが欲しかった。今更だけど、そう思う。
軽く愚痴りながらも、順調に買い物リストに書いていた品物をカゴに集めてあたしはレジに並んだ。
あ。このレジ打ちの人、若い。お姉ちゃんと同じかちょっと上だわ。
『ピッ、ピピ、ピッ。ピ』
「九七三円になります」
千円紙幣を渡し、お釣りを受け取る。スムーズな流れで、あたしはカゴを詰め台に置き、ビニール袋を手にとった。
広げながら思うのはやっぱり姉への不満。霊媒師としての才能はともかく、家事能力を向上して欲しいものだわ。
さっき、お釣りを出されたときにレジ打ちのお姉さんの手をちらっと見たら赤ぎれの痕が見てとれた。
あの人もきっと家事で苦労してるんだわ。ざっと見、大学生の一人暮らしってところでしょうね。
通学カバンを肩に下げ、カバンとは反対側の手に荷物を持つ。振り向きざまに買い物カゴをレジ近くの回収場所に置いた。

スーパーを出て、あたしは小さくため息をついた。同級生には見られたくないわね、こんな姿。
所帯じみていてあんまりお洒落とは言えない。別に服装とかにお金を掛ける趣味なんてないんだけど。
住宅近辺のスーパーのタイムサービスは全て暗記している辺りのことは、さすがに気にするわ。
お父さんもお母さんも仕事でいろんな所に飛んでるから仕方のないことだったけど。
一応、うちは祖父母もいる三世代家庭なのに。あの二人はやれ、湯巡りだとかで家にいることのほうが珍しいし。
もうあの人たちについては、観光地から送られてくる葉書くらいでしか生存の確認ができない。
お盆には必ず帰ってくるけど。今年も年末年始だっていうのに旅の途中。年賀状の消印はスイスだった。
あれに比べれば国内に必ず両親がいるだけマシに思えたわ。少なくとも二人の携帯で連絡がつくもの。

そういえば、最近は何も起こらなさそうね。随分と平和なものだわ。
やっぱり禁界と通じる門を壊した成果があったのかしら。
……まあ、あの後も鳥居からたくさん魔物っぽいものがいたし。キリがないかと思ったわよ。
とりあえずでてきたものは全滅させたけど。
……はぁ。靖と2人だけじゃとても倒せる数じゃなかったわよ。
妖狐のかく乱とカマイタチもいたからなんとかなったものの。

……ああ、だけど。本当にお姉ちゃんにはもうちょっと家事をやって欲しいものね。
炊事洗濯はあたしの担当で、ゴミ出しと掃除はお姉ちゃんの担当。
表面的には二つと二つで分担量は同じに見えるけど、かなり不公平だわ。
あたしは毎日ご飯を作って洗濯もするのに、お姉ちゃんは週二回で良いんだもの。
炊事と洗濯、その全般をこなすのって重労働よ。食事をしたらお皿を洗わなきゃならないし。
洗濯なんて洗って干して乾いたら取り込まなきゃならない。それも、料理の合間に。
「せめて皿洗いと洗濯物を取り込むのくらい、しなさいっての」
あたしは母親でもなんでもないのに。それどころか、妹なのよ? 普通は立場が逆でしょう。
前にもうちょっと楽させてよって頼んだら部活が忙しいの一言で拒否したし。
「あああああ、ほんっとうに」
こっちはねえ、家事に追われてるせいで部活にも入れない身なのよ。
どの面下げて部活を理由に家事を拒絶出来るのよ。そんなに厚顔無恥な人間が何処にいるっていうの。
そう内心腹を立てながら、住宅街近くの公園を通り過ぎていった。
「あ、鈴実。それスーパーからの帰り? お疲れさまー」
厚顔無恥が、アホ面下げて堂々と公園にいた。



「ただいまー」
この前の散歩の時はカマイタチに攻撃されたのよね。
しゃくだけど、パクティに言われなかったら訳がわかんないまま殺されてたかも。
そういえばあいつ、カマイタチがみえてたんだから清海と同じ魔法が使えるのよね?
でもあいつが使ったのって、金属よね。魔法にそんなのあったかしら。
「おかえり、鈴実」
え? この声は、お母さん! 帰ってきてたの?
「おかえりー、鈴実。お母さん、今日は何作るの?」
お母さんは、私が買ってきた材料をみて、献立を決めた。
なんだかお母さんの顔見たら安心したっていうか……疲労感が抜けていくのよね。
「そうねえ。ほうれん草とお魚と豆腐をつかった料理かしら」
「お母さん。あたし部屋に戻るから。晩ご飯ができたら呼んで」
「わかったわ」

お母さんが帰ってきたから、これで1週間は料理をしなくて良い。
お姉ちゃん、絶対自分では料理をやらないのよねえ。こんなのでお嫁にいけるのかしら?
料理って、普通お姉ちゃんがするものよ。ホント頼りにならない姉。

「ニャー」
「ん……あら」
黒猫がベットの上にいる。あら? 眞流菜はシロネコ。
この野良猫、どこかから入ってきたのかしら?
「おいで」
この黒猫、眞流菜に任せるかな。眞流菜は野良猫をみつけると外に連れ出してくれる。
眞流菜に任せたら不思議と2度とその野良猫が入り込む事はないし。
人より猫を追い払うのが上手な猫なんて、多分うちの眞流菜だけね。
「あいつ、封印を解こうとしている。奴を今の内に追い出せ。でないと真っ先にやられることになるぞ」
「え?」
あいつって、眞流菜の事? バカバカしいわね。どうしてあたし達がネコの眞流菜にやられるって言うのよ。
………って、今猫がしゃべった!? う、嘘。ホントに? 夢じゃない?
「ねぇ」
「ニャー」
もう1回聞こうと思ったけど……さっきの、空耳かしら?





「ニャー」
眞流菜がいつの間にかいる。どうしてネコっていきなり現れるのかしら?
「おはよう、眞流菜」
そう言えば、今何時かしら?時計をのぞくと、7時20分だった。
やばいわ、早く朝ご飯とお弁当のしたくをしなきゃ!

「おはよう。今日は寝坊? 珍しいわね、鈴実にしては」
ピタリと駆け下りていた足を止める。
……あれ? 何でお母さんが。あ、そういえば昨日帰って来たんだった。
テーブルにはご飯とお味噌汁と鮭。それと漬物。いかにも日本的な朝食が置かれてある。
それとお姉ちゃんのお弁当もできてた。良かった、お母さんが帰ってきてて。
「うん。寝坊しちゃって。いただきます」
『ドタバダ! ゴンっ!』
朝から騒がしいお姉ちゃんね。おまけに最後の段でこけちゃうし。
「あいたーっ、寝坊しちゃった! あと10分しかない! 鈴実、お弁当はぁ!? ……あれ、お母さん?」
お姉ちゃんもあたしと似たようなリアクション。やっぱり普段お父さん程じゃないけどいないからかしら。
そういえば正月以来帰ってきてないのよね。おじいちゃんとおばあちゃんは仕事よりも旅行に行ってるほうが多いし。
2人揃って温泉めぐりが好きでしょちゅうだし。だから今はお母さんとお姉ちゃんと私の3人しかこの家にはいない。
「そうそう、3月の中旬にお父さんが帰って来るそうよ」
「えっ、ホント!?私ね、お父さんに話があるの」
だから絶対帰ってきたら話があるって伝えといて!とお姉ちゃんはお母さんに言った。
はいはい、とお母さんははにかんだ笑いを浮かべつつ言った。
よくありそうで、でもうちでは滅多にない光景。もっとお母さんが居てくれたら良いのに。
そう考えてることは見せずに、おみそ汁をすすりつつ横目でお姉ちゃんをみる。
「またケータイの事? ごちそうさま」
「それもあるけど、別の話もあるの! あ、もう時間。ごちそうさま。いってきまぁす」
「いってらっしゃい」
……なんで顔が少し赤くなってたのかわからないけど。あたしはまだ時間があるし。
ゆっくりひさしぶりに食べるお母さんのご飯を食べた。やっぱりおいしい。
料理の腕も、お母さんだけには敵わない。あたしもまだまだね。
「雪菜がお父さんに、ねえ……」
お父さんは頑固だから娘にケータイ1つ持たせてくれないのよね。
あたしも欲しいから、説得の時一緒にやってるんだけどダメだの一言で言い捨てられる。
そうだ、お母さんにさっきの事言うかな? うちは幽霊とかの類が普通の家よりよく寄って来るから。
まぁ、あたしとお姉ちゃんで追い返してるけど。
とりあえず家系的な能力は全部引き継いでくれてるのがせめてもの救い。
「ごちそうさま。いってきます」
壁にかけられた時計を覗くと7時35分だった。そろそろ清海を迎えにいかないと。
「いってらっしゃい」
家をでて、5軒ほど先の清海の家に向かう、いつものこと。
靖の家の隣を過ぎたら起きた時にいたクロネコがいた。しかも寝そべってる。
「?」
だけど寝てるっていうよりぐったりしてる?変ね。そう思ってたらのろりと顔だけ持ち上げた。
「あいつは行動にでる。やられる前にやれ。同種の陰猫である俺をここまでするほどだ。封印を解きにかかるだろうなあいつ」
そう言い残して、消えた。音もなく。あたしはだれかに声をかけられるまで呆立ち尽くしていた。幻、じゃないわよね。さっきのは。
「鈴実、何やってんだ?」
「靖。ちょっと、ね」
はぁ。今日は朝から変な事が。眞流菜を殺せとか言う猫がいるし。消えるし、お父さんは帰って来るみたいだし。
「ふーん、あ。ヤベー、今日委員の当番があるんだった。悪ぃ」
と言って走って学校へ行った。間に合うのかしら?



「どうしたの?」
清海は家の前であたしを待っていた。
「今日、変なのをね。それにお父さんが帰って来るのよ。あの頑固親父が!」
あ、いけない。つい言っちゃったわ。でもホントのことなのよね。
「変なの? 相変わらず頑固なんだー。戻って来た時もこっぴどく怒られたの?」
そーよ。ああもう思い出しただけではらわたの煮え繰り返るかと!
「そう。子供が何日も家に帰らず何ふらふらほっつき歩いてるんだって言うだけなのに長ったらしく説教するのよ!」
頑固親父の事考えるとホント今でも腹がたつ……一言、二言ですむ事をわざわざ1時間もかけて説教する!?
「あ、そ、それで変なのっていうのは何なの?」
あら。いけない。殺気ビンビンだったわ。
「それと変なのって言うのはね、クロネコが眞流菜を捨てろだ殺せだと言ったのよ」
なんでペットでそれに賢い眞流菜を。それに猫が猫を殺せって言う?
「そういえば黒猫が陰猫だかどうだか言ってたわ。それに封印が解かれるって。封印されてるなんて聞いた事ないけど」
「そうなんだ? 猫じゃないんじゃないの? 気にする事はないよ、カマイタチがいるくらいだし」
「そうよね。清海はカマイタチを毎日見てるんだし」
ま、良いわ。忘れることにしておく。あれもネコじゃなかったのかもしれない。
カマイタチみたいな動物っぽい魔物もいるくらいだし。そう考えると簡単だった。冗談かも。
そんな事よりあの頑固親父をどうやって説得しましょうか。それのほうが重要ね。やっぱりケータイって欲しいし。





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